無理なブリッジ設計でダメージを受けた根を健全に残し再度ブリッジ作製したケース
⇩ 初診時です。一見きれいなブリッジですが、よく見ると中心から向かって右の3番目に隙間ができています。
計5本のブリッジ(2本抜歯済み)ですが、向かって右側は隙間ができている歯のみで支える設計で、明らかにのちに無理がくる設計です。また、この患者さまは夜間就寝時に歯ぎしりがある方で、それもブリッジには大きなリスクになります。
患者さまと詳細に相談し、ダメージを受けている根を健全な状態までもっていき、ブリッジの支えをもう1本増やすことでブリッジを安定化し、歯ぎしりに対しては、夜間のナイトガード(マウスピース)で対応することとしました。
⇩ ブリッジをはずしたところです。向かって右の3番目の根に虫歯があり、歯ぐきに埋もれています。
⇩ 余分な歯ぐきを切除し、虫歯を取りました。ただしこの状態ではまだ型を取ることはしません。
人工物を作る際、歯ぐきに埋もれている状態で型を取ることは避けるべきです。『Biologic Width:生物学的幅径』『フェルール効果』という2つの専門用語を理解する必要があり、ここでは詳細を省きます。
そのような人工物が歯ぐき深くから立ち上がっている状態は、爪と皮膚の間にグサリと何かが刺さっているのに似ています。それもずっと。そういった事態は避けた方が良いと思います。
⇩そこで、根をしっかりと露出させるテクニック(小矯正で根を引っ張り出し→歯周外科で歯ぐきを整える)を用いて、しっかりと露出させよい型を取ることができるようにしました。まず見えないように仮歯に内蔵したワイヤーから根の中に入れたフックをゴムで引っ張りました。
仮歯の表には何も見えません。中には下のようにワイヤーを入れています。
その後歯周外科で歯ぐきの形態を整えます。
細かいことですが、この際にはなるべく左右対称な歯ぐきのラインになるように、1ミリ単位で計算して歯周外科を行っています。回復させた歯は『犬歯』といい、一番歯ぐきのラインが高い位置にあります。向かって左側の犬歯の位置に合うようにしています。
また、今回は行いませんでしたが、抜歯済みの部分の歯ぐきが見た目を損なうほどやせてしまった場合は、ボリュームを取り戻すテクニック(CTG:結合組織移植術)というものもあります。
⇩ようやく準備が終わりよい状態になりましたので、型を取ってブリッジを装着しました。
その後、歯ぎしりへの対応としてナイトガード(就寝時のマウスピース)でブリッジと歯を守ります。
かなり手間もかかり長い治療となりますが、ダメージを受けた犬歯を抜歯してしまうと、『3本連続欠損』の状態になり、さらに無理な設計のブリッジかインプラント治療が必要となります。患者さまの将来を考えると、犬歯を良い状態に持っていくことは何としても死守したいことでした。今後もメインテナンスを行い経過を追う予定です。
●小矯正(エキストルージョン) 保険外診療 55,000円(税込) 2か月程度
●歯周外科(クラウンレングスニング) 保険外診療 33,000円(税込) 数週間程度
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